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寿命

 還暦を過ぎていまさら人の尊厳とか命の重さを説く気にもならないが、昨今のとどまるところを知らない平均寿命の伸長には驚かされる。
 長寿社会はありがたいが、急な社会の変化は老々介護、医療費、年金破たんとひずみも多い。
年金受給者がこのまま増え続ければ、支え続ける世代は大変なことになると警鐘を鳴らす。しかし一方では、あまりにも急な変化が押し寄せて混乱しているだけなので、いずれ片付くという意見もある。
この件に関しての私の見方は悲観的であり、ことの本質はそう甘いものではないと考えたほうが良いと思っている。
 というのも、長寿社会は偶然そうなったわけでなく、大きなシステムが働いてそうなったのであり、同じ条件が続く限り、平均寿命は同じペースかそれ以上のペースで伸び続けると思われるのだ。
 その第一の要因は、国民皆保険制度である。すべての国民が保険に加入することで、少ない自己負担で医療給付が受けられることとなった。
 要因の第二は、医療技術の進歩である。IP細胞の例を引き合いに出すまでもなく、近年の科学的データに基づいた医療は、経験則を味方につけることで一気に進歩した。ガンは早期発見により、ほとんどの人が一命をとりとめている。脳や心臓疾患も昔なら当然亡くなっていたような患者が元気に復帰している。
 医療技術はその回数を重ねることで大きく向上するから、保健医療制度の下で、多くの患者に治療した実績がものを言う。これが、第三の歯車である。
 一昔前、戦後生まれの人間は飽食を続けているので、戦前の人間ほど長生きはできないといわれていたが、現実は何のストレスも与えないままさらに長寿となるであろう。要は、医療技術の進歩はそんなわずかな差などもろともせずに乗り越えられということである。長寿の血統さえも今後はどの程度の影響力を残せるかも疑問である。
 寿命が天から与えられたという意味で用いられる「天寿を全うする」も、医療技術によって生き永らえるなら妙な違和感を覚え、色あせたものに見えてくる。
 周りに名医を見出した人間が長生きできるという方程式が成り立ち、不思議な縁が自分の寿命を決める世の中になって来る気がする。こうして患者を救った名医は、さらに経験を積み、よりたくさんの長生き老人をつくっていく。
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