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宮本武蔵か認知症か

徒然
04 /02 2013
 今年は寒い日が多かった。歳をとると寒さが身にしみる。身体が縮こまって肩が凝るようなそんな日には温泉がいちばんだ、今年の冬はよく温泉に行った。
3月も終わりの日曜日、よく行く近くの温泉につかった。露天風呂から見るまわりの風景もまだ雪景色だが、温泉の空気は肌を刺すような冬の空気とは違って、いくぶん優しくなっていた。
午前中は人も少ないと思って来てみたが、陽ざしに誘われてか結構たくさんの人が入っていた。混んだ洗い場が少し気になったが、すっかり温まって上機嫌で脱衣場にもどったところ、自分のロッカーの前で少しお年を召したおじいちゃんが着替えをしている。半分座り込んでいるような格好で、随分ゆっくりした動作だ。
ここの脱衣場は、100円を入れて鍵をかける方式のロッカーが壁伝いにあって、その前に脱衣籠を並べたつくりだ。おじいちゃんのロッカーは、僕のロッカーの右下の場所で、扉の高さが少し低いので、座り込んだような格好になっているのだろう。
邪魔になると悪いと思い、おじいちゃんの着替えが終わるのをしばらく待っていたが、なかなか終わらないので、待ちきれずロッカーから服を取り出そうとおじいちゃんの頭越しに鍵を開けた。と、その時、戻ってくるはずの100円玉が下にころがっておじいちゃんの目の前に止まった。おじいちゃんは何事もなかったかのようにその100円玉を拾って、そして自分の小銭入れに入れた。
それは全く不思議な時間で、何の違和感もないごく当然のような動きを見せられては声も出なかった。そうだ、おじいちゃんは自分のロッカーから100円が落ちてきたに違いないと考えて急いで自分の財布に入れたのか、だとすれば、当然の行動ということになる。普通、自分の物でなければ、あたりを気にしたり、動きがぎこちなくなったりするはずだ。僕はそう考えた。
すると待てよ、今、開いているおじいちゃんのロッカーの扉の裏にも取り忘れた100円が残っているはずだ。僕はそう思い直した。おじいちゃんが帰ったらその残った100円をもらえばいいじゃないか。そう思うことにした。
おじいちゃんは帰った、はたして・・。100円は残っていなかった。これってどういうことなの。人間、殺気も警戒心も見せずに罪を犯せるものなのか、僕は殺気をみせずに生き物を捉える人物を宮本武蔵以外に知らない。
春の風に乗せて自分らしいメッセージを送っていくつもりの第1号は、認知症なのか達人なのか全く分からないおじいちゃんの偉業をただ見守っただけのレポートになってしまった。
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